薬剤部
はじめに
薬剤部では当院の理念である「患者さんにとって最適な医療を行う」を基本に、病棟担当薬剤師はもとより、薬剤部一丸となり患者さんへの治療に積極的に関わり、貢献することを目標に日々業務を行っております。
薬剤部は大きく分けて、調剤室、注射調剤室、注射混注室、病棟業務、DI(医薬品情報管理)室、臨床治験室の6部門から成り立っています。
中央部門
調剤室
内服薬・外用薬を調剤し、患者さんにお薬をお渡しすることを目的としており、主に入院患者さんと、一部外来患者さんの調剤を行います。お渡しするお薬は、処方に指示された薬剤を取り揃えているだけではありません。調剤をする前段階として処方せんをチェックし、その患者さんに最適な薬剤が処方されているか、用法・用量等が間違っていないか、相互作用(飲みあわせ)がないか等の確認をし、疑義があれば処方医師に直接照会をします。
処方せんチェックが終わった後調剤を実施し、監査を行います。この調剤と監査はそれぞれ違う薬剤師が行い(ダブルチェック)、患者さんにお渡ししています。また、同じ商品名の薬剤が規格違いで当院に採用されている(○○10mg錠と○○20mg錠など)場合、処方せんに自動的に薬剤名の前にチェック欄が2つ表示され、薬剤師は規格違いの薬剤がある事を処方せん上で認識でき、調剤、監査時に薬剤と処方せんの規格を再確認した後チェック欄にチェックするよう、未然に調剤ミスを防止するシステムも導入しております。
他には服薬状況によって調剤(朝・昼・夕食後などに分けた薬剤の1包化)方法を変更するなど、患者さんのニーズに合った調剤を実施しています。
注射調剤室
主に入院患者さんの翌日分の注射を調剤していますが、外来患者さんの化学療法剤の調剤も行っています。大きく分けて、入院患者さんの定時注射及びTPN(高カロリー輸液)、入院及び外来患者さんの化学療法剤の調剤と監査業務を行っています。
定時注射は、患者さんに日々使用される注射を、個人用注射カートに搭載し使用される前日に各病棟に払い出しています。処方せんが発行された後、内服と同様処方せんチェックを行います。チェック後、まずは病棟毎に薬剤を必要な種類、数を準備し、準備した薬剤を用いて調剤します。調剤後、違う薬剤師が鑑査を行います(トリプルチェック)。また、内服処方せんと同様に同規格の薬剤には薬剤名の前にチェック欄が表示され、調剤ミスを防止するシステムを導入しています。これは、処方せんの種類にかかわらず薬剤部で出力されるすべての処方せんに適用されています。TPN(高カロリー輸液)の調剤も定時注射と同様に行っています。
化学療法剤は、他の薬剤よりも患者さんに与える影響が大きいことから、より厳密に管理しています。他の注射業務と異なる点としては、医師が処方をする場合、化学療法剤以外の処方は自由に組み合わせられますが、化学療法剤は決まった組み合わせを事前にひとつの処方として登録し、その組み合わせでのみ処方できるシステム(プロトコール制)を採用しています。これによって、医師が処方をする上でのミスをなくせるようにシステム上で管理しています。また、処方せんが発行された後、薬剤部では患者さんの病名とプロトコール上の病名が一致しているか、用法・用量・日数等に間違いがないか等を監査する「レジメンチェック」を行っています。ここでチェックした処方せんは、他の注射処方せん同様、取り揃え後、調剤、監査を行い、翌日の調製業務に備えます。
その他、配合変化(薬剤の組み合わせにより効力が落ちてしまう)や安定性の問い合わせ等にも対応しています。
注射混注室
この部門では主にTPN(中心静脈栄養)に使用される高カロリー輸液や、化学療法剤の溶解、混合調製(混注)を行っています。
TPNで使用される高カロリー輸液は、「高カロリー=高ブドウ糖濃度」である事から、末梢(腕などの細い血管)静脈から施行すると、静脈炎を起こしてしまう可能性が高い注射です。そこで、中心(首などの太い血管)静脈から施行する必要がありますが、この場合、高カロリー輸液であるが故に、末梢静脈から施行する注射よりも感染に配慮する必要があります。そこで当薬剤部ではクリーンベンチを使用し、ベンチ内を無菌状態にして混注業務を行っており、混注時の細菌混入を防止する対策を取っています。
化学療法剤は、安全キャビネットという設備を用い混注します。この安全キャビネットは無菌的に、かつ医療従事者に化学療法剤の曝露を防止する目的で利用されます。そのため化学療法剤のほぼ全てを薬剤師が混注しています。
TPNと化学療法剤の混注後、それぞれ混注をしていない薬剤師が監査を行い、病棟や外来化学療法室に払い出されます。
病棟部門
病棟薬剤業務・薬剤管理指導業務
各病棟に1名または2名の薬剤師を配置しており(一部病棟は除く)、主に以下の業務を行っています。
- 入院された患者さんの持参薬の鑑別および医師への服薬提案
- 患者さんの状態に応じた医師への処方提案
- 個々の患者さんの状態を確認しながらの処方薬の妥当性の検討
- 薬剤の相互作用(飲みあわせ)や、注射剤の配合変化の確認
- 服薬指導
- TDM(薬物血中濃度)の解析
- 副作用が生じる可能性のある薬剤を使用している場合の予防方法、副作用が生じてしまった際の対処方法
- 医師、看護師への情報提供
- 多職種による病棟カンファレンスの参加
以上に加え、中央業務(調剤、注射調剤、注射混注)もローテーション制で兼務しています。
その他の部門
DI(医薬品情報管理)室
この部門では薬剤情報を様々な機関から取り寄せ、その情報の妥当性を検討し、薬剤師はもとより、医師や看護師などその職種に合うよう加工し、情報を伝達しています。
緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)等、緊急を要する情報に関しては、処方医師や処方する可能性のある診療科の医師等に素早く伝達し、患者さんの安全を確保できるよう努めています。他職種からの薬剤に関しての質問についても、文献やメーカー等に問い合わせをし、その情報を基に回答をしています。また、業務の効率化を図るためのシステムやツール等の開発にも携わっています。
臨床治験室
当院では数多くの治験行っていることから、薬剤師を配置し患者さんの状態のモニタリングをすることで、安全、安心に行えるよう手助けをしています。主な業務として、患者さんへのヒアリング、被治験者の選定、同意取得、治験薬の説明、状態のモニタリング、実施状況の確認および患者さんへの聞き取り、管理記録および保管文書整備等が挙げられます。