腹膜透析
腹膜透析(PD:peritoneal dialysis)
腹膜透析(PD:peritoneal dialysis)は、腹部にカテーテルを留置する手術を行います。そのカテーテルを介して腹腔内に透析液を注入し自分の腹膜を利用して透析を行う治療法です。基本的に、毎日ご自宅で治療を行っていただく在宅治療になるので、通院は1~2回/月ほどで血液透析と比べ時間的制約が少ないです。確かに腹膜炎などの合併症がおこることもありますが、血液透析でもバスキュラーアクセストラブルなど様々な合併症がおこることがありますし、腹膜透析には身体的な負担が少ない・残腎機能が保持されやすいなどの利点もたくさんあります。
以前は、腹膜透析は若くて自立した患者さんがするもの、仕事に従事している人達が社会活動を続けていけるための透析治療と考えられる傾向が強く、それはいわゆる「PDファースト」の概念として間違ったものではないのですが、最近は「実は高齢者にこそ腹膜透析は非常に適している治療法」と考えられるようにもなってきています。つまり、体格の大きい若年者などでは腹膜透析では透析不足になることも懸念されますが、食事量や代謝率の低い高齢者は腹膜透析でも十分な透析効率が得られることが多く、また身体的な負担が少ない点や在宅治療である点などから、高齢患者さんの腎代替療法に腹膜透析を選択する事の重量性が注目されるようになってきています。
ただ「自分で自宅でする」という事に抵抗や不安を強く感じ、「自分には無理だ」と思われてしまう患者さんも少なくないと思います。そこで当院では腹膜透析患者さんへの訪問看護を積極的に取り入れております。形態としては週に数回の頻度で介入する場合から、アシストPD(訪問看護師や家族など、患者本人以外の人が腹膜透析手技を施行)をはじめ連日継続して介入する場合など、患者さんの状況にあわせ臨機応変に対応しています。また高齢者に腹膜透析を選択する場合には使用液量は少量ですむ場合が多く、当院では高齢者には1~3回交換のCAPD(持続携行式腹膜透析)を訪問看護の時間にあわせ処方するなどの工夫も行っています。このように訪問看護や介護サービスなど社会資源を有効に使用する事により腹膜透析の「敷居」が下がり、高齢者や独居の患者さんでも腹膜透析を自由に選択し継続していけると考えています。
腹膜透析の最大のメリットは、「比較的今までとさほど変わりない生活を自宅で過ごす事ができる」という高いQOLを得る患者満足度にあると考えられます。社会全体の高齢化に伴い透析患者の高齢化も進んでおりますが、高齢腎不全患者に対する治療法の一つとして腹膜透析の選択もあると思われます。
若い方でも高齢者でも自由に腹膜透析を選択できるよう、そして安全に腹膜透析を継続し有意義で充実した時間を長く自宅で過ごす事ができるよう、今後とも地域全体で協力しながら透析医療に取り組んでいきたいと考えております。