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小児思春期科

血液疾患用パンフレット

小児血液悪性腫瘍の診断と治療 小児の血液疾患や悪性腫瘍は多くはありませんが、多くのものが早期に適切な診断・治療を行うことにより治癒することが可能となってきています。今回は、この小児血液・悪性腫瘍の診断と治療について述べさせていただきます。

1.小児血液・悪性腫瘍の頻度 図に示しますように白血病が最も多くを占めます。その他には脳腫瘍、神経芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、悪性リンパ腫などが多くを占めます。この白血病の中では急性リンパ性白血病(ALL)が多くを占めます。
2.白血病 白血病には、おおまかに急性と慢性、骨髄性とリンパ性という大きな分類があります。ですから、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)の4つがあるのですが、小児は急性のものがほとんどで特にCLLはありません。ALLが全体の80%を占めます。
 白血病の症状としては熱が出たり、骨の痛みを訴える、さらには貧血のために顔色が不良になったり、寝てばかりいるという症状で気づかれることもあります。また血小板が減ることで皮膚に出血斑がみられて気づかれることもしばしばです。診断には腰の骨に針を刺して骨髄の中の血液を吸引する骨髄穿刺という検査が必須です。

1) 急性リンパ性白血病

小児の急性リンパ性白血病は現在では約70%が治る病気です。しかしながら、この急性リンパ性白血病の中にも治りやすい人と治りにくい人がいます。現在は予後因子(治りやすさの目安)を病気になった時点で明らかにし、それにより強さを変えるという方法をおこなっています。すなわち、治りやすいお子さんにはそれほど強くない治療をおこない後遺症のない治癒を目指し、治りにくいお子さんには強い治療をおこなって治癒を目指すという方法です。これらの予後因子には大きく分けて5つあります。1つめは発症時の年齢です。発症時の年齢は1歳から9歳が良いと言われています。1歳未満の症例は治りにくく、また成人に近づくにつれ治りにくくなると言われています。2つめは発症時の白血球の数です。白血球の数が治りやすさに関係するのです。例えば10,000/μlを超えれば一段悪いでしょうし、50,000/μl、100,000/μlと増える毎に見通しは悪くなります。3番目は細胞表面マーカーです。白血病の元になるリンパ球にはB細胞やT細胞あるいはNK細胞などの種類があります。これらの由来によって薬に効き方が違うとされています。例えば、T細胞由来はだらだらと再発しやすいとか、B細胞由来は薬が早期に効きやすいし再発も早いなどです。特にこのB細胞というもののうち分化段階の早いCD10という抗原(細胞表面の目印のようなもの)を持ったものはcommon ALLとよばれ、小児に多く治りやすいと言われています。逆に普通には存在しないT細胞とB細胞あるいは骨髄系の細胞の性質をあわせ持った白血病などは治りにくいとされています。4つ目は染色体もしくは遺伝子です。12番の染色体と21番の染色体が一部分ずつ入れ替わる異常(これにはTEL/AML1という遺伝子が関与します)は小児に多く薬は効きやすいとされています。一方で9番の染色体と22番の染色体が一部分ずつ入れ替わる異常(これにはbcr/ablという遺伝子が関与します)は極めて薬の効きが悪く、他の因子がどんなに良くても極めて悪いとされています。5番目は実際に薬を使ってみての反応性です。これは最近認識されたことですが、プレドニンという薬を1週間使用してどれくらい血液中の白血病細胞が減るかをみるというものです。これにより、よく反応して減る人は薬が効きやすい人ですし、減らない人あるいは逆に増える人は効きにくい人といえます。これらのことを総合的に判断して治療法を決定します。
治療はビンクリスチン・THPアドリアマイシン・L-アスパラギナーゼ・プレドニゾロンなどの抗癌剤を使用して白血病細胞を減らした後に、白血病細胞の逃げ込みやすい中枢神経や睾丸にも効果のある治療を行い、一般的に4~5ヶ月の入院治療を要します。その後は外来にて2年間程度の治療を行います。

2) 急性骨髄性白血病

小児において急性前骨髄性白血病を除く急性骨髄性白血病は現在では約50~60%が治る病気です。しかしながら、この急性骨髄性白血病の中にもまた治りやすい人と治りにくい人がいます。急性骨髄性白血病の場合はもっとも重要なものは、染色体もしくは遺伝子です。例えば8番の染色体と21番の染色体が一部分ずつ入れ替わる異常(これにはAML1/MTG8という遺伝子が関与します)は小児に多く薬は効きやすいとされています。一方で9番の染色体と22番の染色体が一部分ずつ入れ替わる異常(これにはbcr/ablという遺伝子が関与します)は極めて薬の効きが悪く、他の因子がどんなに良くても極めて悪いとされています。また実際に薬を使ってみての反応性も重要です。最初の治療で、うまく反応するかどうかという問題です。初回の治療で反応した人は薬が効きやすい人ですし、反応しないは効きにくい人といえます。これらのことを総合的に判断して治療法を決定します。予後の良い群では約6~7ヶ月の入院によるエトポシド・ミトキサントロン・シタラビンなどの抗癌剤の治療で終了します(外来での治療は行いません)。一方、予後の悪い群では、造血幹細胞移植を行うこととなります。

3.神経芽細胞腫
神経芽細胞腫は小児血液・悪性腫瘍の中で白血病に次いで多いとされています。また年齢、病期、あるいはその発生部位によって著しくその予後が異なるという特徴を有しています。症状としては腹部腫瘤や顔面蒼白、貧血、食欲不振などの他に眼球突出、眼瞼出血、跛行、下肢痛などがみられることがあります。以前は生後6ヶ月時に尿の検査(尿の中のVMAおよびHVAという物質を測定します。)によるマススクリーニングが行われていましたが、乳児期には自然に消退する神経芽細胞腫もあることが知られており有効性の議論がなされ結論のでないまま中止となっています。しかしながら、札幌市では検査時期を変えて継続しています。腫瘍はおもに腎臓の上に存在する臓器である副腎あるいは脊椎(背骨)の両側にそって存在する交感神経節からできることがほとんどです(しかし、交感神経節は首から骨盤の中まであるため、あらゆるところに発症する可能性があります)。治療は腫瘍を摘出することは重要ですが、予後によって異なります。年齢が1歳未満、あるいは病期が早期である場合、病理組織で分化している場合、N-mycという遺伝子の発現がない場合が予後良好とされています。予後良好の群ではビンクリスチン・シクロフォスファミドなどの比較的軽い抗癌剤治療を行いますが、予後が不良な群ではこれにシスプラチン・THPアドリアマイシンなど抗癌剤を加えたり、放射線療法や造血幹細胞移植などが行われます。

4.ウイルムス腫瘍
ウイルムス腫瘍は腎芽腫を意味しますが、小児の腎腫瘍を総称して呼ばれている場合もあります。厳密には鑑別すべき病気として間葉芽腎腫、腎明細胞肉腫、横紋筋肉腫様腫瘍などが存在します。ウイルムス腫瘍における初発症状はおもに入浴時やオムツ交換時などに腹部腫瘤に気づかれた、ということが最も多いです。治療は、やはり腫瘍の摘出が重要です。手術後にはビンクリスリン・アクチノマイシンDなどの抗癌剤治療を行います。進行病期の症例では、これにアドリアマイシンなどの抗癌剤を加えたり、放射線治療を行うこともあります。
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